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「ようこそ。天地の階段へ」
私が戸惑っていると、神秘的な場所の方から背中に蝶のように半透明の綺麗な羽根を生やした赤ん坊がやってきた。その姿をみて、私は直感的にこの子は天使ではないかと悟った。
「その通りです。私は天の国。あなた方が天国と呼ぶ場所からやってきた案内人です」
どうやら、天使は人の心が読めるらしい。私が頭で考えたことを読み取り、ニッコリと笑って返答した。
天使が現れたということは、ここはあの世で間違いないようだ。しかし、あの世という割りには、何だかおかしな気分だ。天国でも地獄でもない。ただの階段とは。
「そうです。ここは、あなた方が言う天国でもなければ、地獄でもありません。ここは二つの間に設けられた階段なのです」
天国と地獄の間に設けられた階段。どういうことだ。天国という場所は、悪いことをしていなければ、すぐに行ける場所ではないのか。
「それは、昔の考えです。最近では色々と善悪の概念が変わってきましたからね。昔は、人殺しの英雄でも善人扱いされたり、生活に苦しんでいる人が世の中に貢献していないと悪人扱いされたりと、本当の意味で平等ではなくなってきました。そこで、天国と地獄を管理する者達の間で話し合われ、一つの方針が打ち出されたのです」
方針とはなんだ。
「そもそも、天国も地獄も、善悪の概念も関係なとという結論です。どうしても、天国に行きたければ、自分の足で辿り着けという話です」
つまり、どういうことだ。
「この階段を上りきった方だけが、天国で過ごせる資格が与えられるのです。これなら、善も悪も関係ありません。年代ごとに上る階段の数は違ってきますが、あなたは若いので他の方より少し後ろの方からスタートすることになります」
そんな馬鹿な。天国や地獄の概念がないとは、これでは善を尽くしてきた人には不公平ではないか。
「でも、悪人も同じ扱いです。疲れるかもしれませんが。いつかは、天国に辿りつけます。あ、それと、一つ大事なことがあります」
まだ、何かあるというのか。この長い階段を上ること意外に。
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