幽霊に至る経緯

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 それほど、落下の衝撃が大きかったことを物語っていた。 「畜生」  私は悔しがった。その悔しさを誰にぶつければいいのかも分からずに。確かに、天使の言いつけを無視して階段に腰掛けてしまったのは自分だ。だが、階段の手抜き工事のことを教えなかった天使にも責任はある。  しかし、それらの元を辿っていくと結局は、人類の数が増えすぎたことが原因なのだ。人類の発展は死後の世界に大きな影響を与えてしまった。あの世に対していくら、恨み言を呟いても仕方ない。呟いたからといって、天国に地獄にもいけなくなった私にとって、そこは無縁の世界だ。今となっては、その恨みをぶつけることができるのは、この世の人間だけ。 「そうか・・・」  私は窓ガラスに映るグロテスクな姿を見て、あることに気付いた。 「そういうことだったのか。こうして、幽霊というモノが出来上がるのか!そして、幽霊がよく言う『うらめしや』とは、こういう意味だったのか!」  私は幽霊として、この世でやっけいけそうな気がしてきた。
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