邪悪な黒狐族との闘い

16/27
前へ
/97ページ
次へ
「ぴぎゃあっ!!」 痛みとショックに、姫香は涙目になって飛びあがった。 「ふ、ふえっ……!?」 唇をわなわな震わせて、潤んだ瞳で紗雪を見ると、紗雪はきつい眼差しでじろりと姫香をねめつけた。 「べたべたさわんじゃねぇよ、このタコッ!!」 (ふえっ……この人、怖い……!!) まだ5才だった姫香は、火がついたように泣き出した。 泣き声を聞きつけて、剣狐がやってきて、ふたりを自分の部屋に連れていき、肉まんと烏龍茶をご馳走してくれたのだった…………… 「おまえ、よく覚えてるな、そんなくだらねぇこと」 姫香が話し終えると、紗雪は腕組みして、呆れたように姫香をじろりと見た。 「だって、シッポを思い切り引っ張られたんだよ?痛くて死ぬかと思った」 「ぷっ、オーバーな奴」 紗雪は、おかしそうに笑っている。 「それだけじゃないよ。毎晩寝る前に怖い話してさ。僕、怖くてトイレに行けなかったんだから!」 「だって、おもしれぇんだもん。おまえ、マジでビビるからよ」 「ひっどぉい!!紗雪の意地悪っ!!」 姫香はぷんとむくれて、上目遣いに紗雪を睨んだ。 「腹ごしらえもしたし、行くぞ」 紗雪はあさっての方を向いて、大きく伸びをした。 「……今日はもう帰りたいな……」 先ほどの十夜のことがまた胸をよぎり、姫香は長い睫を伏せてぽつりとつぶやいた。 紗雪がふりむいて、鋭い眼差しで姫香を射すくめる。 「甘ったれてんじゃねぇよ。今夜は俺が闘い方を伝授してやる」 「うぅ……紗雪の鬼……!!」 路上に置いたラベンダー色の紙袋を持って、姫香は渋々紗雪に従った。image=479026668.jpg
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

106人が本棚に入れています
本棚に追加