106人が本棚に入れています
本棚に追加
「うわぁ、また新しい商品が出てる~❤」
店のショーウインドーにかじりつき、姫香は歓声をあげた。
うっとりした眼差しで、綺麗にディスプレイされた新商品の数々を眺める。
掌と鼻をショーウインドーに押しつけ、じ~っと店内を覗きこんでいる姿は、実際の年齢よりもかなり幼く見えて可愛いらしかった。
青山通りにある「ラブリィ❤ティル」。
姫香のお気に入りのお店だ。
最近急増中のしっぽグッズのショップの中でも、品揃えと種類の豊富さでは群を抜いていた。
人間界に移り住む白狐族が増えるにつれて、こうしたショップが全国各地で目立つようになってきた。
姫香は、しっぽフェチだ。
どんなに忙しくても、しっぽのお手入れは欠かさない。
妖狐の間では、しっぽの手入れに時間とお金を費やすのは、一般的にはメスのみだ。
だから、しっぽのお手入れに熱心なことも、しっぽグッズを買いあさっていることも、同居人たちには内緒だった。
とは言え、浴室の棚に堂々としっぽ用のシャンプーやリンスやコンディショナーが置いてあるのだから、みんなにバレバレなのだが、姫香は秘密にしているつもりでいた。
「う~ん、どうしようかな……やっぱり欲しいよね、これ。買っちゃおうっと」
どうしようかも何もない。最初から買うつもりでいるのだ。
だが、「お買い物は迷ってからするもの」だと、姫香は思いこんでいた。
最初のコメントを投稿しよう!