邪悪な黒狐族との闘い

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「うわぁ、また新しい商品が出てる~❤」 店のショーウインドーにかじりつき、姫香は歓声をあげた。 うっとりした眼差しで、綺麗にディスプレイされた新商品の数々を眺める。 掌と鼻をショーウインドーに押しつけ、じ~っと店内を覗きこんでいる姿は、実際の年齢よりもかなり幼く見えて可愛いらしかった。 青山通りにある「ラブリィ❤ティル」。 姫香のお気に入りのお店だ。 最近急増中のしっぽグッズのショップの中でも、品揃えと種類の豊富さでは群を抜いていた。 人間界に移り住む白狐族が増えるにつれて、こうしたショップが全国各地で目立つようになってきた。 姫香は、しっぽフェチだ。 どんなに忙しくても、しっぽのお手入れは欠かさない。 妖狐の間では、しっぽの手入れに時間とお金を費やすのは、一般的にはメスのみだ。 だから、しっぽのお手入れに熱心なことも、しっぽグッズを買いあさっていることも、同居人たちには内緒だった。 とは言え、浴室の棚に堂々としっぽ用のシャンプーやリンスやコンディショナーが置いてあるのだから、みんなにバレバレなのだが、姫香は秘密にしているつもりでいた。 「う~ん、どうしようかな……やっぱり欲しいよね、これ。買っちゃおうっと」 どうしようかも何もない。最初から買うつもりでいるのだ。 だが、「お買い物は迷ってからするもの」だと、姫香は思いこんでいた。
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