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「ふふっ」
姫香は、笑ってぺろりと舌を出した。
こんなところが、紗雪らしい。
マンションに帰ると、静音が優しい笑顔でふたりを迎えた。
「お帰りなさい。珍しいですね。ふたり一緒なんて」
それには応えず、紗雪は刀を肩にかついだまま「凛は?」と訊いた。
「まだ帰ってません」
静音の返事に、姫香はホッとした。
凛は、責任感の強い男だ。
いつも、帰宅は4人の中で一番遅い。
1日も早く黒狐族を殲滅(せんめつ)させたいという使命感に燃え、黒狐族との闘いに没頭しているのだろう。
それでも、週に4日はいったん夕食を摂りに帰宅するのだが、今日は水曜日だ。
月・水・金は、家事担当の静音の負担を減らすべく、各自、外食することになっている。
毎日外食にしたらどうかと紗雪が提案したことがあるが、静音は「だめです。毎日外食にしたら紗雪と姫香はファーストフードばかり食べるでしょう。栄養が偏ってしまいます」と即座に却下したのだった。
静音の言うことは、当たっている。
あの後、午後8時頃に、姫香と紗雪はマクドナルドで遅い夕飯を摂った。
さらに、渋谷のカフェで、姫香は紗雪につきあってもらい、ショートケーキとチョコレートパフェも食べていた。
甘いものが苦手な紗雪は、コーヒーだけだったが。
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