邪悪な黒狐族との闘い

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「疲れたでしょう。お風呂沸いてますよ」 静音は、いたわるような眼差しをふたりに向けた。 お風呂、と聞いて、姫香は今日買った新しいシッポ用のシャンプーとコンディショナー、艶出しスプレーのことを思い出した。 薔薇の香りの商品だ。 早く試してみたい。 「おまえ、先に入ってこいよ」 紗雪が、ちらりと姫香を見た。 「うん」 こくりと頷き、姫香は自分の部屋からパジャマなどをとってきて、新商品の入った紙袋を手に浴室に向かった。 姫香の後に紗雪も入浴を済ませ、3人でコーヒーなどを飲みながらリビングでくつろいでいると、凛が帰ってきた。 時刻は、10時半になるところだった。 「お帰りなさい、凛」 静音がソファーから立ちあがり、凛にコーヒーを淹れるためにキッチンに向かった。 「おう、遅かったな、凛」 コーヒーカップをソーサーに戻して、紗雪が凛の方を見た。 ココアに息を吹きかけながら、姫香も上目遣いに凛を見た。 猫舌の姫香にあわせてあらかじめぬるめに作ってあるのだが、「ココアはふーふーして飲むもの」だと姫香は思いこんでいた。 「…………」 冴え冴えとした切れ長の瞳に険しい色を浮かべて、凛は紗雪と姫香を交互に見た。 怜悧な美貌に、深い苦悩が滲んでいる。 ただ事ならぬ凛の様子に、姫香と紗雪は顔を見あわせた。 (凛、どうしちゃったの?何かあったのかな?) (俺が知るかよ) そんなアイコンタクトを交わしていると、静音がコーヒーを載せたトレイを手に戻ってきた。
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