邪悪な黒狐族との闘い

4/27
前へ
/97ページ
次へ
買い物を済ませて、姫香はほくほく顔で店を出た。 既に陽は西に傾き、紫色の薄闇があたりを覆いつつあった。 ジーンズのポケットから携帯を取り出し、姫香は時間を確かめた。 5時25分。 まだ、帰るには早い。 黒狐族が人間を襲う頻度が増えているので、最低でも8時頃までは巡察しないと…… (今日はどの辺に行こうかな……) 携帯をジーンズのポケットにしまいながら、姫香は少し迷った。 本当は紗雪にメールしたいけど、緊急時以外、巡察中に携帯を使用することは禁じられている。 同じ剣狐(けんこ)のもとで育ったためか、「同居人」たちの中でも、姫香は特に紗雪のことが大好きだった。 もっとも、姫香が他人を嫌うことなど、滅多にないのだが。 (決めた!今日は赤坂方面に行ってみよう) 新商品がぎっしり詰まったラベンダー色の紙袋をぎゅっと握り直して、姫香が地下鉄に乗るべく歩き出そうとした時。 たまぎる悲鳴が、夕闇を裂いた。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

106人が本棚に入れています
本棚に追加