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(黒狐族かーー!?)
瞬時に表情を引き締めて、姫香は駆け出していた。
悲鳴の聞こえた方角に、もつれあう複数の人影が見える。
街灯の灯りに浮かびあがったのは、二組のカップルを取り囲む7、8人の黒狐族の姿だった。
既に刀を抜いて、カップルに斬りかかろうとしている。
街灯の灯りに反射して、刀身がぎらりと光った。
「邪悪な〈黒〉めっ!!僕が退治してやるっ!!」
凛と叫んで跳躍し、姫香は一気に黒狐族との間合いを詰めた。
妖狐は、跳躍力にすぐれている。
軽く地を蹴っただけで、5、6メートルの距離を跳躍することができた。
「〈白〉の姫香か。返り討ちにしてやる」
姫香を見ると、黒狐族の男たちはいかつい顔に殺気をみなぎらせていっせいに姫香に向き直った。
いずれも劣らぬ屈強な体躯の男たちだ。
灰色の羽織に黒い袴姿、頭部から黒い狐耳が生え、ふさふさした黒いしっぽを威嚇するように逆立てている。
「ふーんだ、くたばるのはそっちの方だよ」
鋭く男たちを見据えて、姫香はスラリと刀を抜いた。
少女めいた美貌だが、手練れ揃いの白狐族でもナンバー4の腕を誇っている。
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