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五月十八日
「明日のスケジュールはわかっていますね?」
眼鏡をかけた初老の厳つい女がつんとした態度で話す。
この人は苦手。
一応敬語を使用しているけど、なんでこんな小娘に、とでもいったかのように見下しながら嫌悪感丸出しにしていた。
「えーっと、確か雑誌のインタビューを受けるんでしたよね?」
タクシーの中で明日のスケジュールの打ち合わせをする。
大物女優ならば高級車に乗るところだが、私はお高くとまるのが嫌い。
運転手は黙ったまま車を走らせる。
だが後部座席、私の左隣に座るマネージャーは、私に向かって喧しくしゃべり続ける。
唾が飛んでこないか、それだけが気になった。
「最低、一週間後のスケジュールまで頭の中に叩き込んで置いてほしいものですね。でないとこちらが困ります」
マネージャーはフンと鼻を鳴らした。
私はそっぽを向いて無視をする。
車窓に映る光。街はすっかり夜が更けていた。
今何時頃なのだろう。
事務所を出たのが深夜一時だから……。
「聞いていますか?」
マネージャーは少し苛ついた調子で言った。
更年期って大変なのね。
歳はとりたくない。
ピリピリカリカリしちゃって。
マネージャーはまさに反面教師。
「聞いてますよ。ちゃあんと」
マネージャーは長く溜め息をついた。
溜め息つきたいのはこっちだってのよ。
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