第1話 竹内真帆編①

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「……マジで……?」  すごい、すごい、すごい!  これが私?  こんなことが起きるなんて。  私は音を忘れて、久しぶりに化粧ポーチを取り出した。  これだけ顔のつくりが整っていたら、分厚いメイクは要らない。ブラウン系のアイシャドウに、きつくならない程度のアイラインを引く。眉毛も形を整え、マスカラを塗り、チークをのせ、唇にはグロスを。  かつて、こんなにメイクを楽しく感じたことがあっただろうか。  メイクだけじゃ駄目だ、髪もちゃんとセットしてみよう。  化粧台の上に放り出されたままのヘアアイロンの埃を取って、艶々になった髪を丁寧に巻いた。クローゼットから、目が覚めるような、鮮やかな青色のシフォンワンピースを取り出し、身に着けた。黒いベルトを腰の高い位置で留め、全身鏡で自分の姿を映し出してみる。
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