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◇
「別れよう」
そんなありきたりな台詞で、トキはあっさりと去って行った。
そこから今日で、何日目だっけ。
カーテンを閉め切っているため、1日中薄暗い部屋。微かにこぼれる光の量で、ようやく朝と夜の区別がつく。けれども少しも意識を払っていないので、これで何回目の朝なのか分からない。
……いい加減にしないと。
頭では分かってる。
何もしなくても、気が付けば増えている床に落ちた髪の毛。ぐねぐねまとまって、埃と一緒に転がっている。拾う気にもならない。
汗でねとねとした両腕は青白く、手首にはくっきりと骨が浮かび上がっている。
かぴかぴに傷んだ、伸ばしっぱなしの茶色い髪の毛。ずっと大事に伸ばしてきた。トキがロングヘアが好きだったから。8年間、1度もショートにしたことがなかった。切らなくていいように、シャンプーやトリートメントに気を使い、月に1度は必ず美容院にも通っていたのに。
今や、そのお金すらない。
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