第1話 竹内真帆編①

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 ……仕事かあ。  漠然と、探さないといけないとは思っていた。本当なら、探さなくて良かったんだけど。  先月まで、私が住んでいる県では有名な商社に勤めていた。午前8時には出社して、帰りは午前様なんてザラ。休日も少ないし、性格のきつい上司にはよく悩まされていた。  けれど、気の合う同期もいたし、給料には満足していたから、はっきりとしたきっかけがなければずっと勤めるつもりでいたのだ。  ……本当、辞めるんじゃなかったよ。  後悔しても遅い。時間は巻き戻せない。  当り前だ。  私はアドレスから、美貴奈の電話番号を選んだ。  もしかしたら、この仕事がきっかけでまた動き出せるかもしれない。  そんな期待を少しだけ抱きながら、彼女に電話をかけてみた。コール音は、今人気の女性アーティストの歌のオルゴールバージョンだ。コロリコロリと、可愛らしい音色が響いてくる。こういうところが、美貴奈らしいなって思う。  ワンフレーズ聴き終るところで、電話がつながった。
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