第1話

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今日はいつもより遅くまでカブトムシとりをしていました。 いつもならカラスが鳴き始めるころには帰るのですが、めずらしくたくさん見つけることができたので 採集に夢中になっていたらいつもより辺りの景色が暗くなっていたのです。   現在ぼくの虫かごの中には4匹のオスと2匹のメスが入っています。 この豊作ぶりには僕も大満足で、ほおも思わずニヘラ、と緩んでしまいます。 いつもよりほんの少し遅くなるだけだからそんなに暗くはなっていないだろう、とタカをくくっていましたがそうでもありませんでした。 夕方をすぎた森はなんと暗いのでしょうか。 僕はちょっと怖くなってしまいましたが、すぐに思い直しました。 そうです、ぼくには計22匹のカブトムシとお父さんとお母さんと二つ下の妹がいるのです。怖いものは何もありません。   それに、もしぼくが夜の森を怖がったと知ったら、小学校のともだちはぼくのことをビビリ呼ばわりするでしょう。 それだけは絶対にいやです。   ぼくはさいきん好きになったアニメのテーマソングをハミングしながら歩くことにしました。 すると、ふしぎに体が軽くなったような気がしました。 ぼくはぶきみな鳥や獣の鳴き声も気にせず、淡々と歩を進めました。 テーマソングの力はすごい! と心の底から感激しました。   森と町とのさかい目にようやくたどり着くか、というところでぼくは奇妙な音を耳にしました。 はじめは何かが地面をたたいているだけにしか聞こえなかったのですが、聞いているうちに一つのリズムがあることに気がつきました。   たたたん。たたたん。たた、たん。たん。
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