第1話

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それを聞いてぼくはだれかがダンスをしているのだと思いました。 小学校の運動会でやったおどりのリズムに似たものを感じたからです。   その音がどこから聞こえてくるのか知るため、ぼくは目をとじ、耳をすませました。 どんな人がおどっているのか一目見たくなったのです。   しかし、音が聞こえてくる方向は全然つかめませんでした。 どうやらその音は森の中で何度もはね返ってぼくの耳に届いてくるようなので、いろんな方向から音が聞こえてくるのです。   もう時間も遅いし、早く帰らないとお母さんに怒られるかもしれないので、ぼくは帰ることに決めました。   そのとき。 「君、一体何を探しているの?」   唐突に女の人の声がしました。   ぼくはおどろいて目を開け、辺りを見回しました。 声の主はぼくのうしろにいました。 若い女の人で、陽気なステップをふんでいます。 ダンスをしていた人は、どうもずっとぼくのうしろにいたようです。 これが『トウダイモトクラシ』というやつなのでしょうか。まったく気がつきませんでした。 「さっきからおどっていたのはあなたですか」   とぼくはたずねました。 「あら、気がついた? そうよ、このあたしがさっきからキノコの生える音に合わせて踊っているのよ」 とその女の人はおどりを続けながら答えました。   キノコが生える音?
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