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「「マジョ?」」
お母さんの声をオウム返しするぼくと妹の声がかさなりました。
妹は右手と左手にそれぞれ、ロバート、ジェニファーを持ってあそんでいました。
その二匹は妹のお気に入りのカブトムシなのです。
「そう、魔女。迷信みたいな話だけど本当にいるらしいわよ。うちは割りに緩めにしているけど、よそのお宅だと夏でも門限五時なんてところもあるらしいからね」
ぼくはそんな家に生まれなくてよかったなあと思いました。
5時からがカブトムシとりの本番なのですから。
「マジョってどんなかっこうをしてるのかなあ」とぼくが聞くと
「さあ。でもまあ、黒のローブとか杖とか毒りんごとかなんて一般的魔女のイメージよね」
「それってたとえば『白雪ひめ』とかに出てくる?」
「ああ、それそれ、そんな感じ。よぼよぼのお婆さんでキシャーッとか叫んじゃいそうな」
ぼくはそれを聞いてほっとむねをなで下ろしました。
今日ぼくが出会ったのはマジョではなく、ただのきれいな女の人だったことがお母さんによって証明されたのです。
「もしマジョなんていてもあたしのロバートとジェニファーがコテンパンにしちゃうもんねー」
そう言って妹は二匹のカブトムシでぼくの腕を突いてきました。
かなりうっとうしかったのでぼくはとっとと自分の部屋にもどりました。
付き合ってられません。
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