第1話

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その夜、ぼくはふとんにもぐりながら今日出会った女の人のことを考えていました。   女の人は言いました。 『何か未練が残りそうならあなたは明日ここに来てはいけないわよ』   みれん、とはどういう意味なのか国語じてんでしらべてみたところ、それは『あきらめきれないこと』という意味のようでした。   あきらめきれないこと……ぼくにはたくさんあります。カブトムシは絶対に手ばなせませんし、来週ともだちと海に行くやくそくをあきらめたくもありません。家族だって大切です。他にもたっくさんあります。   でも、しょせんそんなのはうそっぱちだと決めつけることにしました。 ただのきれいな女の人がぼくから家族とかカブトムシをうばえるわけがないからです。 ……では、女の人がわざわざぼくに声をかけてきた理由は何でしょう。 ぼくはそれが気になって、夜遅くまでねむれませんでした。 このもやもやをなくすには、明日会わねばならない、と思いました。 おどるかおどらないかはその場で決めればいいでしょう。
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