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気がつくと軽やかな足音がぼくの耳のすぐ近くでしていました。ぼくは起き上がって女の人がどこにいるのか探します。
起き上がって?
どうやらぼくはねむりこくってしまったようです。しかしそれは無理もない話でした。
昨日の夜は女の人のヒミツについて考えをめぐらしていたせいで十分なすいみんをとることができなかったのですから。
女の人は今日もぼくのはいごにいました。
今日のおどりは昨日見たおどりよりも速いリズムのおどりのようです。
手の動きや足の動きも昨日よりずっとはげしいです。なんかカクカクしています。
「それは何のおどりなんですか?」
「今日の踊りはキツツキが木をつつく音に合わせているのよ」
キツツキ?
やっぱりよく意味が分かりません。
だって、キツツキが木をつつく音なんてどこからも聞こえてこないのですから。
「それで、ここに来たってことはもう何にも未練がない、と解釈していいわけね」
ぼくは首をよこにふりました。
ぼくの動作を見て女の人は首をかしげます。
「それならなんでここに来たの? 今すぐ帰りなさい。それが君のためよ」
「あなたには本当にそんな力があるんですか」
女の人はぼくのせりふを聞いて、ああ、と深いため息をつきました。
「なるほどね。つまり、君はあたしが嘘をついていると言いたいわけね」
「はい」
「まあ、無理もないわ。でもね、あたしは一度も嘘はついていないわよ」
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