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この店では何も男性禁制としている訳でも無い。
だから男性客が来る事も、珍しくは無かった。
その客は今まで見ていたテーブルから、別のテーブルを見始める。
ゆっくり歩きながら、上から下へ一本一本をサッと舐め回すように眺めていた。
「どのような感じをお探しですか?」
真琴は斜め背後から
ファーストコンタクトをとる。
客は眺めていたテーブルから
クルッと回転して、今度は真琴を頭の先から足先まで視線を落とした。
最後に視線が合い
何ともいえない圧迫感を感じながら接客を続ける。
「眼鏡洗浄致しましょうか?」
にこやかに笑う真琴に、客は片手で掛けていたセルフレームを外し無言で差し出す。
「お預かりいたしますね」
そう言いながら眼鏡を受け取り
一礼してその場を離れ洗浄機に向かう。
真琴が洗浄している間も
フロアの至る場所をゆっくり歩きながら見て回っていた。
洗浄しながら客の様子を見ていた真琴は
(‥‥変わったお客さん)
それ以上の違和感を持たず
クロスで眼鏡を拭き上げ客に近付く。
「掛け心地に不快な事はございませんか?」
真琴の言葉に、一瞬左の口角を上げ
「フィッティング、してくれんの?」
「‥‥あ、今まだ勉強中なんですが」
「それでもいーけど?
お手並み拝見‥‥差せて貰おうか?」
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