炎華

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炎華

「というわけで、丈夫な卵を産んでくださいね」 「あの……絶対に無理です。俺、人間だし。そもそも男だし」 ニコニコと眩しい笑顔をこちらに向ける、一人の美形。 どう見ても外国人の――有名俳優かトップモデルだと言われても信じそうなくらい整った容姿。長身の、腰まである美しい銀髪。高すぎず低すぎず艶のある男性の声。 そう、この人は間違いなく男なのにどうして俺はドキドキしているんだろう。 多分それは 「大丈夫です! 貴方ならきっと素晴らしい卵を産み出せますよ、竜王様」 「あ、ハハ……ハ……そうですか」 この人があまりに『痛い人』だからなのかもしれない。 見た目が綺麗な分、本当に残念すぎる。  *** 『いいですか竜王様、早く記憶が戻られるように簡単な説明をさせて頂きますね』 と麗しい笑顔を浮かべながら、痛い美形こと“ミナト”さんが俺に語った内容は次の通りだ。 人間の目には見えないが地球の近く(隣り合ってはいるが異なる次元?)に、地・水・火・風それぞれを司る竜族とその総てを束ねる竜王(真王)が棲む星がある。 通常、地竜・水竜・火竜・風竜に属する者たちはそれぞれ棲む星(存在する空間?)が異なる為、互いに無意味な争いは起こらない。 現・竜王は炎を司り、幼き頃より対の者として水魔である「水(ミナト)」さんを傍に置いていた。 なお、次の竜王は現王が持つ“宝珠”によってのみ生み出される為、火竜を除く地・水・風それぞれの王(※真王以外にも王がいる)達は、己の血を次代の真王に継がせようと現王のつがい争いに名乗りをあげた。 だが突如ここで有り得ない問題が発生。 現王がつがいの相手を決めず、次の真王(の卵)を産む前に命を落としてしまう。 次代の王を作り出す力を持ったまま死んだ竜王の魂は、本来ならば異なる空間であった筈の「地球」へと転生。 そして地球時間での16年後――。 真王の魂と力は現在、特別な能力など一切持たない平凡で冴えない男子高校生、つまり俺の中に入り込んでいるらしい。  *** って、何だそのイっちゃってる設定。 .
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