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黒い煙を纏った異形の怪物が駆け抜ける。
衝撃が木々を振るわせ、現代社会ではテレビでしか見たことない人もいる古式ゆかしい今だ舗装されていない砂利と土で出来た道に振動として伝わる。
黒い煙は膜のように、または身を守る見えない鎧のように異形の怪物を包む。
それは町へ向かっていた。人々を喰らい力を求める為に。
過去は触れてはならない禁忌とされていた化け物だったが、時代が過ぎ、人々は異形の怪物より、同じ人間を恐れた。
怪物にとっては力の源である人々の自分たちに向ける“恐れ”が無くなるのは力の消失。
存在の消失にもつながりかけない。それを本能でわかっているのだ。
その為、生物というカテゴリーにあるなら誰しもが持っている“死”への恐怖を捕食という形で摂取しようというのだ。
だから進む。原始的な欲求に従って。ただ前に。
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