『友』

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 ……でも、最近の私はどこか変だ。昼休憩時に屋上に来たと思ったら、すでに放課後になっていたり。朝、教室に入った瞬間、気づけは屋上に立っていたりと、記憶がすっぽりと抜け落ちていることが増えてきた。  ほんの少しの変化ならそこまで気にしないだろうけど、最近は頻度も増していた。そして、屋上での彼女との時間の記憶でさえ抜け落ちていることがあり、少しばかり不安を覚えた。楽しみすぎて時間を忘れるなんてことはあるけど、これはそんなものじゃないように思えた。  そんな不安が募り始めた頃、私は彼女に対しても不信感を抱くようになっていた。彼女はいつも同じ場所にいるのだ。どんな時間に屋上に赴いても、彼女はいつも同じ場所で、いつも本を読んでいる。毎日、毎日……。  胸の奥に抱いてしまった小さな不安と不審。だけど、私は屋上という場所から離れられなかった。つまらない教室の片隅で、今日も私は早く屋上に行きたくてそわそわしながら授業終了のチャイムを待っていた。  そして、待ちに待った終了を報せるチャイムの音が校内に響き渡った。先生が教室から出ていき、生徒たちもそれに続き自由な時間を謳歌し始める。急いで教科書を机の中にしまった私も、勢いよく席を立った。
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