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それは、この学校の屋上。立入禁止なうえに、あまり綺麗な場所ではないので、生徒たちが好んで来ることはない。私も最初は躊躇いがあった。だけど、どこにいても一人なのだ。どんな場所でも関係ないと、思いきって立入禁止のロープを越えて屋上に踏み込んだ。
――そこは別世界だった。学校という同じ空間なのに、私を苦しめる声もなく、人もいない。ただ広く何もない空間だった。
だけど、そこには先客がいた。日陰になる場所にシートを敷き、座り込む女生徒。黙々と本にだけ意識を向け、ページを捲っている。
そんな彼女が私の存在に気づき、チラリとこちらに視線を向けてきた。初めて他人に向けられた視線に、いつもとは違った意味で体が強ばる。
しかし、それだけだった。彼女の視線はすぐに手元の本に戻っていった。
私を認識しながらも、興味なく遠ざかる視線。やはり、自分には居場所がないのだ……。胸が締め付けられるように痛くなり、息ができなくなる。そして、全身がカタカタと震えていた。
言い様のない絶望に打ちひしがれる私に、再び彼女の視線が向けられた。
「どうしたの? そんな所に立ってないで、こっちに来て座ったら」
ぶっきらぼうな口調だが、彼女は柔らかく笑っていた。
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