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「……えっ?」
こんな対応されたのは初めてかもしれない。絶望が嬉しさに変わっていくけど、彼女の言葉が本意なのか不安もあった。言われるままに座ろうとする私を、嘲笑うための言葉かもしれない。そんな不安で動けない私に、彼女はもう一度声をかけてきた。そして、腰を僅かに浮かせると、横に人が一人座れるほどのスペースを空けた。ここに座れという意味だとは理解できるけど、まだ不安が大きい私の体は動かない。すると、なかなか動き出さない私に呆れたのか、彼女は「大丈夫だから」と、手招きしてきた。恐る恐る横に座ると、彼女はニコッと笑いかけてきて、再び視線を本に戻していった。
何をするわけでもなく、ただ彼女の横に座っているだけの時間。会話がないなんて、いつもと同じなのに、他人が側にいるというのは心地よかった。そして、そうしているうちにチャイムが鳴り、微かに聞こえていた生徒の声も聞こえなくなっていった。
「授業……始まっちゃった」
授業をサボったのは初めてだった。いるだけで苦しい教室でも、授業だけは受けないと、という変な義務意識から『サボる』という選択肢は生活から排除していた。
初めての行動に少し興奮するなか、私は横目で隣に座る彼女の姿を見た。彼女も同じようにチャイムを無視し、静かに本を読み続けている。
「……ねえ、授業出ないの?」
サボった私が聞くのも何だけど、思いきって聞いてみた。
「そういう、貴女は?」
「わ、私は、たまには休んでも良い……かなって」
本から目を離すことなく逆に問い返され、しどろもどろになってしまう。
「ふーん。いいんじゃない。たまには休むことがあっても」
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