『友』

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 久しぶりの他人と会話。少し素っ気ない話し方の彼女だけど、嬉しかった。私がここにいても良いんだと言われたみたいで、嬉しさが込み上げてくる。喜びを実感してしまうと、私の口はどんどん饒舌になり言葉を発するようになった。  色々なことを彼女に話しかけてみた。視線こそ向けられないが、彼女は相づちを打ったり、短い返事をかえしてくれたりしてくれる。本当に久しぶに感じる充実した時間だった。帰り際なんて、高校に進学してから初めて名残惜しい寂しさを感じてしまうほどに。  彼女と出会い得た楽しさ。それからというもの、私は毎日のように屋上へと足を運んでいた。そして、授業をサボる日も多くなっていた。  彼女はいつでもそこにいる。私に気づけば場所を空けてくれ、黙々と本を読む。私は彼女の隣に座り、たくさん話しかけた。読んでいる本のことや、些細な出来事、色々と他愛のないことなど……本当にたくさん。  ただ、喋りかけるのは一方的に私ばかりで、彼女は話しを聞き、僅かに応えるだけだった。私は彼女のことが気になり、何度も質問を繰り返した。それでも彼女は答えを適当にはぐらかし、そんなに自分のことを語ろうとはしなかった。  そんな質問攻めも、しばらくすると勢いが衰えていく。私も彼女に言えないことがあるんだ。だから、彼女にだって他人に言いたくないことぐらいある。それが理解できたからこそ、私は知りたいという欲求を抑え、彼女との静かな時間を過ごすことにしていった。
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