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屋上のロープを超え外へ出ると、私のくすんだ心とは真逆の青く澄みわたった空が視界いっぱいに広がる。眩しい陽射しが降り注ぐ屋上で、彼女はいつものようにそこにいた。私は彼女に駆け寄り、たった今耳にしたことを確かめようとする。だけど言葉が出てこない。呼吸がままならないからじゃない。もし、真実だったらと思うと、怖くて聞けないのだ。
「どうかしたの?」
いつもと様子が違うことを不審に思ったのか、彼女が顔を見上げ尋ねてくる。
ゴクリと息を呑み、私は覚悟を決め問いただした。
「……ねぇ、ここで自殺した生徒がいるって知ってる?」
回りくどいことなど言わず直球で尋ねた問いに、彼女は明らかな動揺を見せた。一瞬、小さく肩を跳ねらせ、すぐさま視線を逸らしたのだ。
「知ってるの?」
明確な答えを得ようと、さらに問いただす。そして、答えの返ってこない沈黙に、とうとう核心を突く言葉を吐き出してしまう。
「もしかして……、その自殺した生徒って……」
「…………」
なおも彼女は答えない。けれども、その沈黙が私に対する答えだと思った。
「……ねえ、お願い。私を連れていって! ここは嫌なの。ここでは誰も私を見てくれない。ずっと一人なの。こんなにたくさん人がいるのに、私はずっと一人なの。苦しいの、息ができないの、体中が痛いの……」
自分にこんな感情があったのかと思えるほどに、色々な感情が溢れ出る。そして、その感情に同調するように、言葉も出てくる。
「ねえ、お願い。私と……」
その瞬間、世界が暗転した――……。
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