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それはさておき、琴には些細な疑問があった。家庭科部は所謂帰宅部であるということは、部長である文恵が自ら口にしたことだ。組織編制で立てた活動計画も、つき一の調理活動と、文化祭への出店以外は特になく、お世辞にも活気のある部活とは言えない。そんな部活で、文恵がこうして部長の真面目に果たそうとしているのだろうか。決してそれが可笑しいことだとか、そういう意味ではないが、文恵のように活気のある生徒がちゃんとした部活動に所属していないのは、惜しい気がしたのだ。それを本人に質問するなど図々しいことをするつもりは無いのだが、どうしても気になってしまう。
「水沢さんって中学何部? なんか陸上とかのイメージあるんだけど」
「中学はソフトボールです」
「私も一緒! ソフトボール部だったよ! 何中?」
「そうなんですか! 私大滝中です」
「わ。毎年必ず四強に入ってる学校だ。去年は確か三位だったよね!? ポジションは? 何番だった?」
「え、と。五番のキャッチャー、です」
文恵の瞳がきらきらと輝く。ああ、この人はソフトボールが大好きなんだなと誰が見ても分かるその興奮した様子で、恐らく自分と同じような理由で部活動に所属していないのだと予想した。
「私は一中出身で、ポジションはセカンド。バッティングはあまり上手じゃなかったから七番以上にあがったことはないんだ」
「一中って市内で一番強い学校ですよね」
「言うほど大したことじゃないって。でも、なんでソフト部あるところに行かなかったの?市内だってソフト部強いところあるじゃない」
「……そんな対した理由じゃないです。行きたいところは偏差値高くて点数が追いつかないっていうのもあったし、もう一つの候補は偏差値的には全然問題ないんですけど、行きたくなくて」
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