第5話

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   デパートに向かうため、二人は教室のある三階から二階へと降りていく。下からはざわざわと生徒の話し声が聞こえ、大勢の生徒が昼食等を買いに来ていることが予想できた。踊り場を抜けて直ぐ正面にあるデパートの入口には既に人だかりが出来ていたが、どうやら中には入っていないようだ。 「まだ開いてないんだ」 「委員会の人が来ないと開店できないんじゃないかな?それにしてもすごい人数だね」  約三〇人は並んでいるであろう列の最後尾に並ぶと、店内にいたデパート委員が内側から扉を開けて生徒を中へと誘導する。  店内は予想していたより広い。と言っても、その半分以上は会社としてのスペースのようで、奥にはパソコンが何台か並んでおり、デパート委員の生徒がなにやら真剣に画面と睨めっこしている。漫画やドラマの中で見てきた購買とは違うその光景は、小さな子どもが新しい発見をしたときのような気持ちに近いものがあり、二人は思わず周りをきょろきょろ見渡した。 「ちょっと不思議な感じだね」 「でも売ってるものは割と普通かな。見た感じパンとおにぎりと飲み物。……と、デザートが少し。あ、私プリン食べようかな」 「本当に?私も食べようかな」  会計を終えた生徒たちとすれ違うと少しずつ列が前へと進んでいく。 「(パンとおにぎりどっちにしよう)」  プリン!プリン!と機嫌の良い様子で口ずさむなこの隣で、陳列棚の前に並ぶ生徒たちの隙間に見える商品を見ようとしたが、親から受け継いでしまった乱視のせいではっきりと確認することはできない。一応コンタクトはつけているのだが、もしかしてまた視力が落ちたのだろうか。見るのを諦め、少しだけ横に傾けていた身体を起こす。  琴はおにぎり二つと焼きプリンを選んで会計を済ませ、先に列を離れていたなこのもと合流した。その手にはプリンの他に菓子パンもある。チョコレートソースがかかったそれに凝視していると、なこは少しだけ恥ずかしそうに笑った。
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