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「あ、今デブの元とか思ったでしょ」
「え!? そんなことないよ!」
「冗談冗談。教室に戻ろうか」
「う、うん。」
なこは一見ふわふわしていて女の子らしいイメージだが、冗談を言ったり、思ったことを包み隠さずに言ったりする、社交的で素直な性格であることが最近分かってきた。まだ入学してあまり経っていないにも関わらず、クラス以外にも知人友人が多数いるようで、廊下を歩いていれば必ず誰かしら声をかけてくる。今更ではあるが、何故なんの共通点もない、席も離れていた自分に声をかけてくれたのだろうか。
「あ、なこプリンと菓子パンとか絶対太るよ。っていうか太れば良いと思う」
「さきちゃんひどいなー」
階段を上がって一組の目の前、廊下で喋っていた女子生徒の中の一人に声をかけられる。少し化粧の濃い女の子だが、なこと友達ということも影響してか、然程苦手には感じなかった。なこの交友関係は幅広く、なこの友人と思われる生徒は大人しそうな子もいれば、校則違反の塊と言って良いほど派手な生徒もいる。そして男女は問わない。
なこのコミュニケーション能力の高さを関心半分、羨ましいという気持ち半分で眺めていると、一組前方の入口から生徒が出て来る。その姿を見て琴は目を逸らす。と言うより、気付かないふりをした。
「どうした山本」
「……なんでもねえよ。いくぞ」
あるはずのないビリビリとした感覚を背中に感じる。今週はこれで何度目だろうか。教室に入って自分の席につくと、開いている前の席になこも腰掛ける。
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