【回想5】学園祭と親衛隊

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「やかましい、さっさと言われたことを実行しろ」 『はいはい。でも良いの? これ結構高くつくよー』 「……お前、勝手に人の写真を使って荒稼ぎしてるよな。儲け全部こっちによこせ」 『人助けは無償に決まってるよね、うん。まっかせといてー!』 金銭の話をした途端に態度を変え、電話を勝手に切る相手。 腹は立つが、まあ良い。あとは奴に任せておけば大丈夫だろう。 ひとまず今日のところは……。  *** 一方、ほぼ同時刻の風紀室。 「ん? 誰からだこのメールは……何!?」 風紀委員長の携帯電話へ直接送られてきた一通のメール。そこに書かれてある内容に驚き、慌てて扉へと手をのばした瞬間。 ――コンコン 「失礼します。あの、僕にご用って何でしょうか先輩」 ガチャリと扉が開いて現れたのは、今まさに捜しに行こうとした相手の姿だった。 「……は?」 「え、あの、風紀委員の人が僕に用があって捜してるから急いで風紀室に来て欲しいって。そう聞いたんですけど」 言いながら僅かに息が切れているのは、本当に急いで来たからだろう。 「違うんですか?」と首を傾げる愛らしい姿に、ほっと息を吐く風紀委員長。 持ったままの携帯画面に目をやり、もう一度メールの内容を確認する。 【委員長の名前で新しい補佐を罠にかけようとしている奴らがいる。彼から目を離すな。/海豹】 「……その話を誰に聞いたんだ。知ってる奴か?」 「いえ、知らない人ですけど。風紀委員の人に言伝を頼まれたからって。あの、どうかしたんですか」 「顔は覚えているか。どんな奴だった、特徴は」 「えっと確か同じ一年生で、背は僕より大きくて。あ、眼鏡をかけてたような……。先輩? その人が何かしたんですか?」 不安そうにこちらを見上げてくる後輩に、思わず笑みが零れた。その途端、真っ赤に頬を染める姿もまた愛おしい。 ともかく彼が無事で良かった。 しかし風紀委員長の想い人であるこの後輩には、ひそかにガード役を付けていた筈なのだが。 あいつは何をやっているんだと腹立たしさを覚える、別名・鬼の風紀委員長。 .
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