平凡な３６５日

【回想１】脇役（通行人Ａ）＝ただの傍観者

嗚呼……なんて静かで平和な毎日だろう。
幸せ過ぎてむしろ怖いくらいだ。

思えば去年は本当に酷かった。
五月――季節外れの転入生が来てみりゃ、ボサボサのでかい頭に分厚い瓶底メガネ。
小汚い妖怪のような見た目からは根暗で大人しそうな印象を受けるのに、口を開くと自分勝手で無駄に声はでかいし態度も悪い。
もちろん会話は一方通行。誰にでも会って数秒で「俺達、親友だろ！」とタメ口だし。
せめて教師と先輩には敬語使えよ、バカ猿が。……いや、一緒にしたら猿に失礼だな。

それが何故かあっという間の「美形ホイホイ」で学園中の人気者どもが虜になっちゃってまあ。
正直あれには俺も引いたな。
何してんのバカなのコイツら？
ってマジ思ったし。

で当然そいつらの信者、つまり親衛隊の奴らがギャーギャー騒ぎ出して。
転入生への嫌がらせだとか制裁だとか、とにかく毎日煩かった……。
俺、転入生の隣のクラスだったんだけど。毎朝隣の教室から異臭が流れてきて鼻曲がるかと思ったし！
転入生への虐めっつーか、絶対アレ周囲の人間の方がダメージ食らってたぞ。

それがいきなりピタッと止んだのが夏休み前。確か、転入生があのおかしな変装を解いたんだよな。
あれは流石に俺も含めて皆びっくりしたわ。
小汚い妖怪の素顔が実は金髪の天使みたいな美少年でしたー。
なんて普通思わないだろ。
おかげで、それまで「汚い」「気持ち悪い」と馬鹿にしてた奴らも手の平返して「ヤらせろ！」なんて追い掛け回すもんだから、余計に煩くなりやがって。

本当もう勘弁してくれって状態。
こっちはいい加減静かに授業受けさせて欲しいのによ。生徒会の奴らは授業中でも平気で隣のクラスにやって来るし、そうすっとチワワ（親衛隊）達がキャーキャー騒いで授業潰れちまうし。
休み時間もあいつらが来ると、廊下が混み合ってトイレにも行けなかったりで。

あいつらの頭上目掛けて、誰かピンポイントミサイルぶち込んでくんねーかな？
と思うくらいには殺意抱いたからね。
もしくは月の無い夜道に背後から……なんていう真似は勿論やんないけどさ。
俺、一応の常識は持ち合わせてるし。

んで溜まりに溜まった鬱憤を夏休みに晴らそうと思ってたら、赤点とっちまって補習登校に。

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