【回想3】体育祭は仮装レース

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「そのアザラシの仮装」 「僕らが考えたんだよー!」 「…………」 ほおぉ、てめーらが元凶か。 クソッぶん殴りてえぇぇ。 「ねぇ何で黙ってんの?」 「もしかして寝てる~?」 「ぐふっ!?」 こ、こいつら今……仰向けで寝てる俺の腹を踏みやがった。 「あ、今ぐふって言ったよね。なら起きたよね」 「じゃあさ何か面白いこと言うか、やって見せてー」 はあぁあ? 意味分かんねーよ。 つーか今すぐその汚い足退けろドッペル。何ならいっそ大量に毒きのこでも食って笑い死にしろ。それこそ好きなだけ笑えるぞ。 と、声に出して言えないのが心底残念だ。 「すみません、疲れてて本当に無理です。あ、あの、お願いですから踏むのもやめて貰えますか」 「え~? つまんない!」 「アザラシくん最悪~ッ!」 「…………」 気弱そうな感じの口調で頼むと、そう返される。最悪なのはお前らだ。 「もぉ~、白けちゃった。じゃあ別にいいや。そろそろ着替え終わるしぃ?」 「だねー、もぉ行こっか」 着替え? ああ、転入生のな。 さすがに女装したままは嫌だったのか、ゴールしてすぐ着替えに行ったらしい。 要するに双子にとって俺は転入生待ちの暇つぶしかよ、ったく。 とっとと転入生の所へ帰りやがれ。 「あ、そうだ」 「!?」 動かぬアザラシ(俺)に興味を無くし、あっさり立ち去る双子書記。と思ったらその片割れだけが急に引き返して来た。 仰向けに寝転がるアザラシの腕(ヒレ?)部分に、冷たい何かを押し付けられる。 いやまぁ辛うじて持てるけど、何だこれ。 「それ、ある人に用意したんだけど必要無くなったからー……もぉ捨てるしかないゴミだし、アザラシ君にあげる。まだ冷たいから、飲んで疲れをとってね」 「え」 そのまま「レース面白かったよ、じゃあね~」と、どうやら缶ジュースらしき物を残して去って行く。 ……なんだよ、調子狂うじゃねーか。 ある人、ってのは転入生のことだろうけど。 わざわざ用意したのに飲んで貰えなかったのか? それはまた何と言うか不憫だな。 ――って、いやいや! 何で真面目に同情してるんだろ、俺。 .
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