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「……」「……」「……」
あ、やっぱ微妙な表情になってるわ。
仕方ない、不本意だがあれ使うか。
「というのは建て前で、実は僕あの人が嫌いなんです。先輩方と違って綺麗でも可愛くもないのに、生徒会の皆さまや風紀委員長さまに馴れ馴れしくって!」
「え?」
「だから、いじわるであの人に先生の用事を押し付けたんです。ごめんなさい先輩、僕って本当に嫌な奴ですよね」
「そ、そんなことないよ! 僕らもね、ちょっとは同じように思ったりしてるし」
「そうだよ、全然ヤな奴じゃないから。むしろありがとーみたいな?」
「でもあの先生、凄く生徒をこき使うらしくて。せっかくの学園祭なのにやっぱりちょっと可哀相だったかなぁ……って」
「へぇー? それは、うん。少しだけ可哀相かもぉ」
いや全然思ってないよね、あんたら。
むしろいい気味って感じだろその笑顔。
まあ今はそれで良いっつーか、そう思わせるのが目的だし。
「あの、僕もう行きますね? 他にもまだ先生に頼まれてる用事とかあって……僕なんかが、先輩方のように綺麗で可愛い人達とお話し出来たなんて光栄です。それじゃ」
「あっ」「君ちょっと」「待って!」
本心ではこれっぽっちも思わない、大笑いしそうな台詞。
だがこれ以上は我慢出来なくて引きつる顔を隠しながら人混みに紛れ込む。
もちろん、呼び止める声は無視だ。
しかも都合よく、目の前の教室からメイド姿の転入生と金魚の糞……美形どもが現れ、場が騒然となった隙に逃げ出した。
あー、まだ耳が痛てぇ。
何だあの雄叫び、生徒会の奴らを見た途端にギャアァァァァだぞ。
さっきの三人も一緒に叫んでた気がするんだが。
というか今日は一般客として女も普通に来てるのに、いつもの光景と変わらないような。
え、おかしくないか?
まさか俺の方が変なの?
それはともかく。
場所を移動し一人になった俺は、嫌々ながら携帯電話を耳にあてる。
「――俺だ。風紀に知らせろ、委員長の名前で新しい補佐を罠にかけようとしている奴らがいる。彼から目を離すな、と」
『あっれ珍しいね、自分から積極的に人助けー? もしかしてその彼に惚れちゃったりー?』
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