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【回想3】体育祭は仮装レース
そして十月。
まぁ何とか予定通り行われた体育祭は、問題無く終わった。
と言いたい所だが……。
最初に断っておくけど、俺の運動神経はかなり良い方だ。全力で走ったら運動部の奴らも多分、簡単に追い抜けると思うし。
そもそもケンカする際の逃げ足に関しては誰にも負けない自信があるわけで。
あ。だからって別にケンカが弱い訳じゃないけどね?
つまり何が言いたいのかといえば。
間違っても体育祭なんかで本気を出すわけにはいかない、ってこと。
真面目で地味で少し根暗そうな平凡がここで目立つのは絶対ダメでしょ。
何の為に今まで体育の授業でも、わざと
『ちょっと人より運動神経が鈍い』
フリをしてきたのかって話だよ。
ちなみに、鈍過ぎるのも逆に目立つんで適度に抑えとくのがポイントだ。
んでも、わざと負けるのはやっぱストレスたまるし。とりあえず団体競技の綱引き・玉入れにだけ出場登録をしておいた。
が、いつの間にか『仮装レース』の出場も決まってて。
……結果、俺は死ぬほど後悔することになる。
いや違うな。
アレ考えた奴が死にたくなるほどの後悔をさせてやりたくなった、って言い方のが正しい表現か。
***
仮装レースが始まると少し走った先に、くじ引き用の箱があった。
選手たちはすぐ脇に設置された簡易テント内で、自分が引いたくじ指定の姿に着替え、後はコースに戻ってゴールまで走る。
そう、走るだけ、なんだが。
他の選手らがメイドやナース・軍服や浪人姿などに仮装していく中、俺はトドだかアザラシなのかよく分かんねー
『海獣の着ぐるみ』姿に変身させられた。
…………罰ゲームかよ。
偶然ながら同じ組だった転入生をチラ見すると、もの凄いミニのセーラー服姿で、長い金髪ウイッグに何故か猫耳と尻尾を装着。さらにはメイク係の手で薄い化粧まで施され
「な、何でこんな格好しなきゃなんねーんだよっ!」
と相変わらずの大音量で騒いでいやがった。うるせぇな。
あー……まぁ女装するよりはマシか?
着ぐるみは着替えの時間が短い分、楽っちゃ楽だしな。
という甘い考えは簡易テントからコースへ戻ろうとした瞬間、吹っ飛んだ。
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