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それを見て各親衛隊のチワワ同士もキャーキャー叫ぶわ口喧嘩し出すわで。
あー……アレだ、まさに『カオス』状態。
こうなるともう俺のアザラシどころじゃなくて、ある意味助かったけど。
結局俺がゴールしたのは、超絶美少女に変身した転入生が一位でテープを切ってから、だいぶ後のことだった。
途中、何度も転んだせいで身体中痛てーし。
着ぐるみの中蒸れて暑ちーし。
しかも五位までしか得点にならない(俺は八位だった)みたいで本当、何ムキになってんの。目立ちたくなかったんじゃねーの?
俺って実はすっげぇ馬鹿なの、ねえ?
――と軽く自己嫌悪。
その後、ゴール付近の芝生で今度こそ疲れてアザラシ姿のまましばらく寝転がっていたら。
(誰も注意してこなかったし、別に良いんだよな?)
例の不運な『転入生の親友』くんを発見。
あ、仮装レースに出てたんだ。へえ、俺らの次に走る組だったのか。
やっぱ走るの遅っせー……てか白いフワフワの耳と尻尾がついてんな。
足も白くて大きな、何だあれウサギ?
不思議の国のアリス仕様かな。
一生懸命に走ってんだけど効果音つけたら多分「ポテポテ」って感じ。
ハハッ何だか可愛いな。
見てて癒されるって言うか。
お、五位じゃん。しかもゴール先で待ってた風紀委員長がすっげー笑顔。
鬼の風紀が、んな甘い顔しちゃってまぁ。
周りの奴らがギョッとしてるよ、おもしれーな。
しかしあの二人いつの間にあんな仲良くなったんだ。不運な平凡くんも、委員長を見て分かりやすく真っ赤だし。
別に俺は男同士ってことに偏見無いし、あの二人だったら普通に応援したいと思えるわ。
もちろん陰ながらね。
なんて一人ほのぼのした気分を味わっていたら、ありえない奴らが近寄って来た。
「アザラシくん!」
「お疲れ様ー!」
「…………」
生徒会のドッペル、双子書記が。
何でだ。
「ねぇねぇアザラシ君」
「アザラシになった気分はど~お~?」
「…………」
どうって、最悪に決まってんだろ。
なんて間違ってもこいつらの前じゃ言えねーし。つーか何でわざわざ、んな事聞いてくるんだ?
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