第8話

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--6.熱-- 「え,なんで…?」 逢沢はどうしても俺から離れるつもりはないらしい。 「佐藤,授業に出ても寝るだけじゃん。 今日くらいサボってもいいじゃん」 …確かに。 彼奴と俺,席離れてんのによく見てんな… 御前本当感心するわ。 その観察力俺にも分けてくれよ。 「いや…でも,内申が下がるし」 「内申気にしてるなら普通寝ないだろ」 まぁそうだな。 また一本取られたわ。 「アンタが何を言っても離す気はないよ俺」 逢沢…御前,ほんと何処かの乙女ゲームかよ。 不覚にもトキめいてしまった俺。 もしや俺もホモなんじゃ…? 否,それはない! 俺はホモじゃない! そんな心の叫びが彼奴に届くはずもなく。 「佐藤は,俺の事…好き?」 またまたそんな乙女ゲームの告白シーンのような質問。 ほんと勘弁してくれよ逢沢さん。 「好き…じゃないけど,嫌いでもない」 曖昧な答え。 それに不満なのか,逢沢が更に聞く。 「好きか,嫌いかどっち?」 好きか嫌いか。 どっちなんだろ,分からない。 好きでもないし,嫌いでもない。 俺は現に今まで逢沢の事を唯のクラスメイトとして見てたから,そんな事を聞かれても困る。 「…分からないよ」 俺ははっきりとそう答えた。 分かるわけがないのだ,御前はクラスメイトにすぎないんだから。 「佐藤,俺は待ってる。 アンタが俺の隣に来てくれる事を」 すると何故か頬が紅潮していった。 自分でもわかった。 「佐藤…今の言葉,嬉しかったのか?」 「ち,違くて…俺朝から熱があって…」 なんて分かりやすい嘘。 「佐藤」 すると目の前に逢沢がいた。 鼻がくっつきそうなほど,近い距離。 更に熱が上がった気がする。 自分でも分かるのだ。 きっと逢沢にもバレているのだろう。 俺は決して逢沢に惚れた訳じゃない。 断じて惚れていない。 俺は絶対に男は好きにならない。 絶対に…
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