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--6.熱--
「え,なんで…?」
逢沢はどうしても俺から離れるつもりはないらしい。
「佐藤,授業に出ても寝るだけじゃん。
今日くらいサボってもいいじゃん」
…確かに。
彼奴と俺,席離れてんのによく見てんな…
御前本当感心するわ。
その観察力俺にも分けてくれよ。
「いや…でも,内申が下がるし」
「内申気にしてるなら普通寝ないだろ」
まぁそうだな。
また一本取られたわ。
「アンタが何を言っても離す気はないよ俺」
逢沢…御前,ほんと何処かの乙女ゲームかよ。
不覚にもトキめいてしまった俺。
もしや俺もホモなんじゃ…?
否,それはない! 俺はホモじゃない!
そんな心の叫びが彼奴に届くはずもなく。
「佐藤は,俺の事…好き?」
またまたそんな乙女ゲームの告白シーンのような質問。
ほんと勘弁してくれよ逢沢さん。
「好き…じゃないけど,嫌いでもない」
曖昧な答え。
それに不満なのか,逢沢が更に聞く。
「好きか,嫌いかどっち?」
好きか嫌いか。
どっちなんだろ,分からない。
好きでもないし,嫌いでもない。
俺は現に今まで逢沢の事を唯のクラスメイトとして見てたから,そんな事を聞かれても困る。
「…分からないよ」
俺ははっきりとそう答えた。
分かるわけがないのだ,御前はクラスメイトにすぎないんだから。
「佐藤,俺は待ってる。
アンタが俺の隣に来てくれる事を」
すると何故か頬が紅潮していった。
自分でもわかった。
「佐藤…今の言葉,嬉しかったのか?」
「ち,違くて…俺朝から熱があって…」
なんて分かりやすい嘘。
「佐藤」
すると目の前に逢沢がいた。
鼻がくっつきそうなほど,近い距離。
更に熱が上がった気がする。
自分でも分かるのだ。
きっと逢沢にもバレているのだろう。
俺は決して逢沢に惚れた訳じゃない。
断じて惚れていない。
俺は絶対に男は好きにならない。
絶対に…
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