プロローグ

2/2
前へ
/113ページ
次へ
「一般人」 東川弘に何かしらのレッテルを貼るとするなら、これ以外に存在しない。 彼は至って普通の家庭に生まれ、至って普通の暮らしを送り、それなりに友達を作り、そこそこの大学に入学した。 その間には恋人を作ったり、思春期によくある悩みを抱えたり、対して特別でもない感情を当たり前のように感じた。 笑って、泣いて、はしゃいで、怒って。 まさに普通の人生を彼は過ごしてきた。 そしてこれからもそんな普通で退屈な、しかし確かに満ちている生活をこれからも送っていくのだろう。 東川弘はそう思っていたし、その事に何の不満もなかった。 その些細な生活に幸せさえ見いだしていた彼にとっては、そう思うのも当然だった。 『この普通の人生をこれからも送っていたい』 これこそが彼の望みであり願いだった。 だがそんな微笑ましいほどにささやかな願いは、ある日突然崩れ去った。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加