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「一般人」
東川弘に何かしらのレッテルを貼るとするなら、これ以外に存在しない。
彼は至って普通の家庭に生まれ、至って普通の暮らしを送り、それなりに友達を作り、そこそこの大学に入学した。
その間には恋人を作ったり、思春期によくある悩みを抱えたり、対して特別でもない感情を当たり前のように感じた。
笑って、泣いて、はしゃいで、怒って。
まさに普通の人生を彼は過ごしてきた。
そしてこれからもそんな普通で退屈な、しかし確かに満ちている生活をこれからも送っていくのだろう。
東川弘はそう思っていたし、その事に何の不満もなかった。
その些細な生活に幸せさえ見いだしていた彼にとっては、そう思うのも当然だった。
『この普通の人生をこれからも送っていたい』
これこそが彼の望みであり願いだった。
だがそんな微笑ましいほどにささやかな願いは、ある日突然崩れ去った。
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