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「よ、弘君」
振り返ると、目の前に一人の女性が立っていた。
目はぱっちりと大きく、明るく活発的な印象。
顔は少し童顔で、もしかしたら高校生と間違われるかもしれない。
今年入ってきた新入生であるから、当然といえば当然だが。
背は弘の肩ほどであり、低くもないが高くもない。
左腕には指針しかない実にシンプルな時計を付けていた。
至って普通の、そこそこに可愛い女性だった。
弘は少し見下ろした形で言う。
「二歳も離れた先輩に君づけとは、馴れ馴れしいもんだな。葵」
「いいじゃない。だって両想いのカップルなんだから」
その言葉通り、二人は付き合っている。
彼女の名前は久遠葵。
同じ文学サークルに入っていた二人は、サークルの活動を通じて知り合い、新入部員歓迎で葵が弘に惚れた所から始まった。
そして葵の積極的なアプローチに、弘もまた気を惹かれたのだった。
付き合いはじめてまだ二ヶ月足らず、仲は至って順調だ。
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