東川弘の日常

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弘はそこであることに気付いた。 葵の右手にはなんと、傘が握られていたのだ。 驚いたように弘は言った。 「天気予報が外れるって分かってたのか?」 「ううん、天気予報なんて見てないよ。ただ、今日は何となくもってこーかなって思っただけ。ほら、最近雨が降りっぱなしだったから」 「そうか、嘘の予報を見なかったのか。今日ばかりは正解だったな」 「そうなるね。本当、ラッキーだったよ」 「そうだな、あまり濡れずに帰れる」 「そうじゃなくて」 葵は「ちょっと鈍いんだよねぇ」と呟いてから、少し照れくさそうに言った。 「ほら、これで相合い傘が出来るじゃない。私、一度やってみたかったんだよね」
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