プロローグ

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††† 六人がいくばくかの道を歩くと、すぐにそれは見えてきた。 テオとエアルが情報収集をしたという街だった。 街──…というには、少し小さいようにも思えた。 レンガ造りの家並みが六人を迎える。 地面は舗装などされていないのか、剥き出しの地面は所々陥没したり、抉れている。 見たこともない風景に、この場に訪れなかった四人は眉を潜めた。 「なんか──…ここ嫌」 キィが心細げにそう呟き、ぎゅっとユズの服の端を握りしめる。 大丈夫だ、と優しく微笑むユズの笑顔は見るものを安心させた。 ただ一人、スイは罪悪感に悩ませられたが。 視線を辺りに一周させて、ユズは首をかしげる。 「カトライト。本当に住民は外にでていたのか?」 ユズが困惑するのも無理なかった。 ひとっこ一人いない、とはこの事を言うんだと思う。 右をみても、左をみても家々が建ち並んでいるだけで、人影すら見えない。 ただ、ユズは断定した。 人がいるということを。
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