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本なのだから、開くだけだ。
邪魔となっていた鎖はアスカが取り払ってくれた。
しかし何かしらの危険を感じるのは自分だけなのだろうか。
「スイ、開かんのか?」
なんの警戒心もなしに、テオがひょいと本を持ち上げた。
ガチャリと本に巻かれていた鎖が地面に落ちて、耳障りな音をたてる。
「もう少し丁寧に扱えよ。カトライト。古い本なんだろ?」
ユズが顔をしかめ、テオをたしなめた。
ユズのもっともな意見に、そーだそーだとアスカが抗議をし始める。
「ああ、そうだったな」
テオはそうユズに答え、先程よりも慎重に持ちながら、本の表紙を利き手で捲ろうとした。
テオの手が、本を捲った瞬間だった。
はたとエアルが何かにきづく。
「だ、駄目です!!隊長!」
さっと顔色を変え、叫んだエアルだったがそれは本から放たれた白い光によって飲み込まれた。
スイは驚きの声をあげる間もなかった。
それとも自分が声をあげたことに気が付かなかったのか。
光は視界を染め上げ、音さえもかきけした。
視界の端に見えたのは、咄嗟にキィを庇ったユズの姿。
少しの安堵を覚えたのも束の間、スイの意識はそこで途切れた。
───by Kino
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