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本当に、ボールいっぱいの冷やし中華を食べさせられたのだ。
『昨日の昼食もぬいたから大丈夫よね〔はぁと〕』
と、笑顔で脅迫されたのだ。
嘘はいっていない。
が、許せ妹よ。
まだ何か言いたげな先輩の様子に、指を立てる。
「それに、夕食の後は何も食べるなと死んだ両親に言われてるし、歯も磨いたし、その、本当に明日美味しく頂きますから」
「駄目だよ! 君の好みに合わせて薄味にしてきたから、この暑さじゃ食中毒が怖い!」
プイ、と鍋を遠ざけられてしまう。
怒られはしたが、感情をあらわしてくれた方が幾ばくかも良い。
「あ、え~と、じゃあ弱火にかけておきますから、それなら問題なですよね?」
「むぅ~……」
少し考えて、
「味が濃くなる」
その辺は僕も妹も調節できますから」
「全然分かってない!」
「は?」
さらに機嫌を損ねてしまった。
なんなのだ一体。
「・・・・・・〔わたしの料理を食べて欲しいのに〕」
「? なんです?」
「……はぁ、まったく君って子は、器用過ぎるところが不器用なんだから」
苦笑いを浮かべて、先輩が引き下がる。
いいですぅ~、また作ってきますから」
「え? 持って帰っちゃうんですか?」
それは、それで、もったいない……。
すたすた、と帰り始める先輩の背を見送った。
ごきげんよう。
「――って、また1時間歩く気か?」
慌てて家に上がり、幾つかの小物と懐中電灯をてにする。
それから、はしたない姿で一緒に怪談モノの番組を見ていた妹の避難の声を背おいつつ(嫌いなら見なければいいのに……)
彼女の後をおった。
「せんぱ~い」
あいかわらず、真っ直ぐには帰ってくれていないようで、自転車を立ち漕ぎして、彼女を呼ぶ。
「おっかしいな……」
5分ほど走って、さすがに人の足はたどり着けない距離まで来てしまう。
先輩の足では全力で走っても無理だろう。
バトンリレーしたって無理だ。
「今日が月夜で良かったよ……」
遮蔽物はなく、青白く照らされた稲穂と、ところどころに十字架のようなシルエットのかかしが見える。
その他には何もない。
生き物の気配は、かえるの声だけか。
「ちっ」
軽く舌打ちして、自転車の方向を家に向けた。
「おりょ、どうしたの?」
「うわっ!?」
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