第2話 あなたの絵を描きたい

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 唐突に腹部に衝撃が走り、視界が転がった。  もう一度衝撃を受ける。  ずるずるとどこかに運ばれて行き、夏の青空の下から、涼しい日陰に連れて行かれた。  酸素を求めて口を開くと、口内に夏の土の味と、血の味が広がる。  殴られたことにそこで気づいた。  「ヘラヘラと笑いやがって」  「お~、怖っ」  頭上から声がする。  (意外と踏みこめるものだ)  さて、どうしようか。  そのままの体勢で考えた。  服の袖に隠した、鉛筆削り用の小刀をおもいだす。  「失礼」  「――!?」  ざわっ、と焦燥が伝播した。  「たてるか」  「……先、生?」  割りこんできた声に顔を上げると、道夫先生がだるそうな表情で僕を覗きこんでいた。  「問題なさそうだな」  「……手ぐらい貸してくださいよ」  自力で立ちあがって、土を払う。  「気づいていたんですね」  「ゆっくり来たのだが、遅かったかな?」  「別の意味では間に合ってます」  血の混じった唾を吐いて、にこりと微笑む。  笑うことに支障がなければ問題ない。  2人のやりとりに何がしか複雑な感情を灯して、少年が僕らを睨め付ける。  「なんだよ!」  あぁ、君がいい。威勢がよくていい」  平静過ぎて、逆に薄ら寒くもある声で、先生はリーダー格の少年に頷く。  「なんだよ」  人数の優劣か、少年は物怖じせず答える。  だが、先生も僕も特に反応はない。  「君、私の絵のモデルにならないかね」  「は?」  「最近、歯ごたえがなくて女性にも飽きててね」  「!」  ざわざわ、と不安の波が伝播した。  彼の絵に描かれるという意味は死である。  「報酬も弾むがどうだね?」  「ばっ――ふざけんな! 誰がお前にてぇな変態に付き合うってんだよ!」  すっ、と何気なく少年の手が伸びる。  だが、それに合わせて先生も動いていた。  瞬間である。  何気なく踏み出された足に、先生が足を合わせると、少年が膝から崩れ落ちた。  何が起こったのか頭が理解する間もなく、何気なく取り出されたペンが、少年の首筋に当てられた。  「?」  少年は、ポカンと目を丸くしている。  あまりにも近すぎて、自分の身に起こっている出来事に気づいていないのだろう。  「少し抗議をしようか」  道夫先生がサングラスをはずして微笑む。  
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