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いつものように、ジェームズとその友人達は休日の午後を湖のほとりで過ごしていた。
他学年の男子生徒達が四人の側でふざけながら臭い玉を投げ合うのを眺めていたのだが、突然ジェームズは立ち上がるとブナの木によじ登りはじめた。
何をしているのか気になったシリウスは、よじ登り続けるジェームズを黙って眺めていた。
数メートルもの木の上で一体ジェームズは何をしているのかとしばらく不思議に思っていたシリウスだったが、それは彼が手を伸ばす先にあるものをずっとただの木の枝だと思って見ていたからだ。
ようやく気がついたのだが、実はそれは木の枝に見せた魔法生物だった。
数分間の格闘の後、俊敏な動きでそれを捕まえたジェームズはご満悦な表情で颯爽と木から飛び降りてきた。
しかしシリウスの背にもたれかかるように本を読んでいたリーマスは、上機嫌なジェームズとは対象的に疲れたように長々と溜め息を吐くと静かに本を閉じた。
いつにも増して顔色が悪いことにシリウスは気が付いていた。
「リーマス、寝ててかまわないから少し休んでろ」
シリウスがリーマスに声をかけると、リーマスは呻きながら頷いてその場で横になった。
いつの間にか四人の側で騒いでいた生徒達は湖の向こう岸まで足を運んでいて辺りは静まり返り、横になったリーマスの隣に腰掛けたジェームズは先程捕獲した生物をピーターと一緒にしげしげ眺め始めた。
シリウスはリーマスを見た。
目を閉じたリーマスの顔は青白く不健康そうで、色素の薄い茶色の髪の毛に相まって本当に病弱な人間に思えた。
然もすれば、儚げにも見える。
規則正しい寝息を立て始めたリーマスの髪にそっと触れると、猫っ毛で柔らかい髪がシリウスの指をすり抜けた。
_____リーマスが、病気の母親の見舞いだということでシリウス達の前から姿を消していたのはほんの昨日のことだ。
気がつくと、ジェームがそんなシリウスとリーマスのことを眉を潜めて眺めていた。
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