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館の表口は近づくにつれ大きさを増し、扉の前に立つ頃にはカナンの数倍の大きさにまでなっていた。
カナンはノックや呼び掛けは無しで、扉を押し開ける。ノックや声を掛けても意味が無いと思ったのか、只知らなかったのかは謎である。
中に入るとそこは大きなエントランス。天井にはシャンデリアがいくつかあるが、どれも明かりを灯すをことはなく、月の光だけが頼りになる。
カナンがエントランスを眺めているとバタンッと音を立てて扉が閉まる。少し驚くが特に問題は無く、館内を見学することにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……………」
館内を彷徨く足を止める。どこからか気配を感じたからだ。
建物の中に誰が居ようと不思議じゃない。逆に居ない方が不自然だ。だけどこの気配は何か変だ。気配と逆の方に進んでいるのにその距離は開くどころか縮む一方。
そして何より、気配に混じって殺気も感じられた。
出来るだけ戦闘は避けたかった。傷は血の力ですぐ癒えるが、痛いし何より死ぬ確率が少しでも上がってしまう。彼女はまだ、死ぬ訳にはいかなかった。
止めていた足を一歩踏み出した。
――――――――パァン!!
一発の銃弾で、私の髪が舞った。
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