壊れた日

3/7

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
未だ降り続く雨の中、傘を差した1人の人間が私に手を差し伸ばした。傘の中に見える顔には皺(しわ)が寄っており、年老いた者だということが分かった。 老人の名は《ダンク・ライニール》。生物学について研究をしている学者だった。 彼に伸ばされた手を私はじっと見つめていた。その後ゆっくり顔を上げ、老人と目を合わせる。 そして老人は一言 ―――――来るかい?―――― そう言った。 ―――――…………え?―――― ついそんな間の抜けた声が出てしまった。だがそれ程までに、私はこの老人の言った事が理解出来なかったのだ。 ―――――来る?誰が?私?私はこの人について行くの?どうして?何故?――――― ―――――生きる為?私は生きたいの?ここから出たいの?生きる為に?この人と居れば生きることが出来るの?死なずに済むの?――――― 思考を巡らせた末、私は……… ―――――彼の手を、握っていた
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加