壊れた日

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分からなかった。理解が出来なかった。 昨日までいつも通り言葉を交わしていた筈なのに。家の留守番をしている時、急にドアを叩かれ開けてみると村人が息を上げて“彼が倒れた”と私に知らせた。 急いで向かうも既に息を引き取っていた。 私は只、動かない彼を見て泣きじゃくるしかなかった、 『可哀相に………これからどうして行くんだろうか……』 『あの子は確か捨て子だったんだろ?じゃあもう駄目だろう』 『しかしそれでは……』 『そう思うならアナタが引き取れば宜しいでしょう?』 『いやそれは………』 それから数日後。村の人達の哀れみの声が怖くて、自分も死にそうで怖くて、私は家で1人ひっそりと生きていた。 もちろん私を引き取る者などいなかった。誰もが私を気味悪がって近づこうともしない。 自分を救い、教え、守ってくれた人が消え、心にぽっかりと穴が空いた。悲しくて、恐ろしくて、家を出ることを自然に拒絶するようになっていた。 そんな悲しみに溢れた日々を過ごしていたある日、御爺様の部屋の整理をしていると一冊のノートが出てきた。何に使っていたものかは表紙には書いておらず、小さくて厚みがあり使い古されていた。 中を開くと多くの文字が列を作っており、読めはするものの殆ど理解出来なかった。
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