其の一

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其の一

「やっぱ俺どうしても、王道転校生の脇で嫌われちゃう健気な平凡くんが次第に総受けるのを生で見たい。というわけで全寮制の男子校に転校しまっス!」 「ああそう。ま、頑張って」 「おう、メチャクチャ頑張るよ俺」 って会話を幼なじみの親友としてたのは、そうです。BL大好き腐男子な俺でっす。 ちなみに父子家庭なんスけど、この度父さんが海外赴任することになって。 俺、迷わず全寮制の男子校へ行きたいと大主張。 転入試験に満点で合格したら、の条件もあっさりクリアで 「うう、パパは淋しいよぅ……毎日電話してね? 絶対の絶対に約束だからねッ?」 と、泣きながら旅立つ父親を、満面に笑みを浮かべ見送ったのだった。 うーむ。いい年をして本当、甘えん坊な父さんです。 仕方ない。毎日電話は無理でも時々メールくらいは送ってあげようかな。 さてさて、そんなわけで。 「王道脇役平凡・嫌われ、からの総受け」 を見るためにはまず何より『王道転入生』が不可欠となる。 そこで俺は決心した。 いつ来るか分からないチャンスは、ひたすら待ち続けるより自ら作っちゃえば早くね? つまり、俺が王道転入生となって舞台を整えれば良いのだ。 んで自分好みの平凡くんを見つけて、あとは彼を総受け状態にしちゃえば……特等席から生BL見放題! よくネットのBL小説とかで、傍観者気取りの腐男子が王道観察してるうちに気付いたら自分が総受けになっちゃいました、ってパターン多いっしょ? だったらあえて先に王道ポジション押さえちまったらどうよ。 思いっきり中心人物として堂々振る舞う方がむしろ余計な被害も少なくて済みそーだし、何より真の総受け(脇役平凡)くんにスムーズなバトン回しが出来ると思わねぇ? うわおっ策士だぜ俺。 さすが、伊達に腐ってねーよなぁ。 ふははは待ってろよ平凡くん。 必ず君を素敵な総受けキャラにしてあげるからね♪ ――と、まだ見ぬ総受け予定の脇役平凡くんに思いを馳せ、一人ほくそ笑む腐男子であった。 ちなみに。学園へ向かうタクシーの中で、にやにやし続ける少年を鏡で確認しながら (この子、何だか気持ち悪いって言うか怖い? うう、変な客乗せちゃったなぁ) 何やらゾワゾワと悪寒を感じる、無駄に勘の良い運転手さん。 いやまあ不運な巡り会わせだったね、としか慰めようが無いのだが……。  *** BLの神様、本当にありがとおぉぉーッ! ねぇそこのア・ナ・タ、聞いてくださるぅ? この世に奇跡ってあるんですのね。いやこれはもう奇跡を通り越してもはや必然。それとも運命。 さては俺が生まれる前から決まってましたか!? なななんと、いきなり理想の平凡くんに出逢っちゃいまひた。 しかも寮の同室者でクラスメート。 ふおおぉ、か・ん・ぺ・き。 .
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