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そもそも、大事な物とはどんな物なのか、理解しかねる。
だが、時々ふと思う時がある。
果たして、1号にとって、私は大事な物なのか、と。
「ご主人。」
色々考えていると、1号の声が横から聞こえてきた。
「なに。」
「ぼーっとしてましたよ。」
「そう。」
しばし、沈黙が続く。
「ねぇ。」
私は珍しく自分から口を開いた。
自分でも驚く。
「何でしょうか。」
「町の人にとって、大切な物って、何。」
「…国王、では。」
国王。
今の時代、国王というものが居る。
国王に仕える兵士達は、銃口に刃のついた銃を持ち歩き、国の為、民衆の為、自分の為、なにより家族の為に命を国王に捧げる。
兵士達に何もかも託し、自分は豪勢な食事にありつく。
そんな国王が町の人にとって大切だと、目の前のロボットは言う。
「安易な答えね。」
私は1号にそう言い捨てた。
「なら、あなたの大切なものは。」
「分かりません。」
「そう…私もよ。」
私はそう言って1号に背を向けた。
何故だろう、この時なんだか、胸が妙に痛んだ。
◇「三年後の化学式」◇
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