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直人くんの腕に力がこもった次の瞬間
その腕から解放されて
唇がぶつかるように激しいキスをされた。
唇の隙間からすぐに舌が入り込む。
…煙草の味がした。
初めての味…。
煙草の香り。
彼の味。
私の左後方から誰かの声がした。
ここは駅ビルのロータリー。
人通りは多く、私たちは人目についていた。
「…直人くん。…人が見てる。」
私は彼を押し退けた。
自分の呼吸が乱れているのは隠しようがなかった。
顔が上げられず、名前も知らない赤の他人に激しく照れた。
直人くんは立ち上がってすぐに煙草に火をつけた。
煙草の煙は強風にすぐに流されて、私たちの周りにはもうすでになくなっていた。
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