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「狭くてうさぎ小屋みたいだろ?」
「そんなことないよ。十分広いよ。」
本当に狭いという印象は全くなかった。
果歩の家と比べても倍以上の広さだろう。
おまけに車も所有して、マンションには駐車場。
果歩は駐車場代が高いからという理由で車を持つのを諦(アキラ)めていたから、
やっぱり…
編集長ってすごいのかもしれない。
私は密かに彼を尊敬の眼差しで見つめ、もう一度部屋を見渡した。
ベッドのサイドテーブルには灰皿が置かれ、吸い殻は山盛りだった。
そこから視線を外してロフト部分の柵に手を掛けて下を覗くと、リビングが見渡せた。
「うさぎ小屋って言うより、“秘密基地”だね。」
「秘密基地?」
「うん。」
「奈々ちゃんは昔も今も発想がおもしれーな。」
直人くんは笑った。
「じゃ、外に旗でも作っとく?“奈々と直人の秘密基地。立ち入り禁止”とかさ。」
直人くんは笑って話す。
「それじゃあ、秘密になってないじゃん。二人だけの秘密なのに…。」
「ああ、そうか。」
昔に戻ったみたいでうれしくて、ついはしゃいで話してしまったけれど
30歳過ぎて“秘密基地”って…
普段の私ならありえない。
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